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2009年1月 9日 (金)

電車女・キリコ揺れる(1)

小春日和の陽気が春の兆しを感じさせるとある日の午後――。

 M社の二階事務所の窓際に並ぶスチール机にやわらかな木漏れ日が反射していた。吉本義男は奥の机に覆いかぶさるように両肘を立てた格好で、左手のひらでしきりに頭を撫でながら、W社からの電話を受けていた。冬場は仕事が減るというのは慣れていたが、今年はとくにひどいもので、これといった案件がほとんどなかった。そこに舞い込んできた久し振りの案件となれば贅沢いっている暇はなく、多少無理な話しでも端から受けるつもりでいたが、こうした事情をおくびに出さずに、あとはどこまで委託費を吊り上げられるか、が吉本の腕の見せ所だった。

――と、入り口のドアが開く音がしてひょいと振り返ってみると、地毛の色が混じった茶髪を肩まで垂らして、細身にしては胸のふくらみが目につく英語ロゴ入りのライトグレイのセータと、ツンと切れ上がった丸い尻を窮屈に包み込んだデニムのパンツ姿で、キリコが立っていた。くりっと大きめの目元には自己主張の強さがあって、微笑むと端が少し持ち上がる唇から細い顎のあたりにかけて、ときおりぞくっと女を感じさせる小振りの顔をしたキリコは、どちらかといえば同世代よりも年長の男性に好まれるタイプだろう。

「お、キリコか、お帰り。ちょうどいいとこに帰ってきた・・・」
と吉本は小さな声で早口に言って、すぐに電話に戻って続けた。

〈――かしこまりました。それは何とかしますから、お受けしたいと思いますんで、料金のほうは・・・・はは、ぜひ、そこんところ・・・・え、はい、それはもう、ええ、大丈夫ですから。はい、またよろしく・・・・では失礼致します〉

吉本はまるで猫になって背中を丸くしながら受話器を置いた。部屋の暖房はさして暑くもないのに、髪の生え際が後退しつつある広めの額にうっすらと汗が滲んでいた。吉本は無造作にハンカチを取り出して汗を拭いながら少し真面目な顔を作り込んで、ソファでファッション雑誌を繰っていたキリコに向かって、呟くような調子で言った。

「あのなぁ、キリコ。ちょっと聞きにくいんだが・・・・キリコのオッパイってなんぼだっけ?」

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